お金の相談で「正論」が一番役に立たない場面

金の相談を受けていると、
こんなやり取りに出会うことがあります。

それは正論なんですけど……
分かっているんですが……

言われた側は、少し戸惑います。
間違ったことは言っていない。
むしろ、かなり正しい。

それでも、
その正論は、相手を助けていない。

今日は、
お金の相談において
「正論が一番役に立たない場面」
について整理します。


正論は「間違いを正す道具」

まず、正論の役割を確認しておきます。

正論とは、

  • 数学的に正しい
  • 制度的に正しい
  • 一般論として妥当

という性質を持つものです。

  • 収入を増やすか、支出を減らすしかない
  • 無駄な保険はやめるべき
  • もっと早く準備しておくべきだった

どれも、
論理としては正しい。

問題は、
正論は「間違いを指摘する力」は強いが、
「前に進ませる力」は弱い
という点です。


役に立たない場面① もう選択肢が削られているとき

お金の相談が持ち込まれる時点で、
その人はたいてい、

  • すでに余裕がない
  • 選択肢をかなり削っている
  • 追い詰められている

という状態です。

この段階で、

もっと早く○○しておけばよかったですね

という正論を投げると、
何が起きるか。

  • 後悔が増える
  • 自己否定が強まる
  • 思考が止まる

つまり、
状況は1ミリも改善しない。


役に立たない場面② 感情が先に溢れているとき

お金の問題は、
生活・将来・家族に直結します。

だから相談の中身は、

  • 不安
  • 恐怖
  • 焦り

こうした感情を
大量に含んでいます。

この状態で、

数字で見ればこうです

制度上はこうなっています

という正論を出しても、
相手の心は受信できない。

感情が先に処理されない限り、
正論は「雑音」になります。


役に立たない場面③ 正論が「逃げ道」を塞ぐとき

正論は、ときに
相手の逃げ道を塞ぎます。

  • 正しい選択肢が一つしかない
  • それ以外は間違い

という構図になるからです。

すると、相談者はこう感じます。

これを選べなかった自分はダメだ
もう挽回できない

正論が、
希望ではなく、詰め将棋
になってしまう瞬間です。


なぜ人は正論を求めているように見えるのか

ここで、
一つ重要な点があります。

相談者は、
必ずしも正論を求めていません。

求めているのは、

  • 整理
  • 翻訳
  • 状況の言語化
  • 次の一歩のヒント

です。

それが言葉にならないため、
「正解を教えてほしい」
と言っているだけ。

正論を返すと、
噛み合わなくなるのはこのためです。


正論が「効く」場面も、もちろんある

誤解しないでください。

正論が不要だと言っているわけではありません。

  • 余裕がある
  • 状況が整理できている
  • 選択肢が残っている

こういう段階では、
正論は非常によく効きます。

問題は、
タイミングです。


本当に役に立つのは「正論の前の一言」

お金の相談で
本当に役に立つのは、
正論そのものではありません。

正論のに置く一言です。

  • 「かなり追い込まれてますよね」
  • 「ここまで一人で考えてきたんですね」
  • 「今は正解を探す段階じゃないかもしれません」

この一言があるだけで、
正論は初めて
「使える情報」に変わります。


専門家ほど、正論に頼りやすい

専門家側の話も、
少ししておきます。

  • 正論は安全
  • 間違いにくい
  • 責任を負わずに済む

だから、
つい正論に寄ってしまう。

しかし、
相談者にとっては、

正しいけど、助けにならない

という結果になることも多い。

正論は、
距離を保つための盾
にもなり得ます。


正論を「道具」に戻す

正論は、
振り回すものではありません。

  • 状況が整理された後に
  • 選択肢が見えた段階で
  • 次の一歩を決めるために

使うべき道具です。

順番を間違えると、
人を救うはずの言葉が、
人を黙らせてしまう。


おわりに

お金の相談で、
一番大事なのは、

正しいことを言うこと

ではありません。

前に進める言葉を渡すこと

です。

正論は、
その後からでいい。

このnoteが、
「正論を言う側」にも
「正論を浴びてきた側」にも、
少しだけ視点のズレを
修正するきっかけになれば幸いです。