ここでは、老齢年金に関して、金額の計算方法、各種制度、年金機構から送られてくる通知物の見方などについてご案内しています。
老齢年金は、主に老齢基礎年金、老齢厚生年金とに分かれます。
老齢年金は、いつから支払われるか
老齢基礎年金
原則65歳ですが、受け取り開始年齢を60歳から75歳の間で選ぶことができます。
65歳未満からの受け取り→繰上げ(減額あり)
65歳を超えての受け取り→繰下げ(増額あり)
老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金という制度が残っており、男性:昭和35年度生まれまで、女性:昭和40年度生まれまでの方が対象です。65歳前から生年月日に応じた受け取り開始年齢が決まっています。
男性:昭和36年度生まれ、女性:昭和41年度生まれ以降の方は、原則65歳ですが、受け取り開始年齢を60歳から75歳の間で選ぶことができます。
65歳未満からの受け取り→繰上げ(減額あり)
65歳を超えての受け取り→繰下げ(増額あり)
老齢年金の受け取り方法
特別支給の老齢厚生年金が受け取れる方でも、老齢基礎年金、老齢厚生年金から受け取れる方でも、現在では、受給資格をお持ちの方には、年金機構から誕生日の3か月ほど前には年金請求書が原則、自動的に送られてきます。
ただし、さまざまな理由(例えば住所が変わったなど)で送られてこないケースはありますので、ご自身でご自分の受け取りができるようになる年齢を知っておくことはとても大切なことです。
送られてきた年金請求書をつかって、請求手続きを行います。
郵送でも年金事務所等への持参でも構いません。
老齢年金の受給資格
老齢基礎年金:10年の受給資格期間を満たしていれば支払われます
老齢厚生年金:10年の受給資格期間を満たしたうえで、以下の条件を満たした方
特別支給の老齢厚生年金:生年月日(男性:昭和35年度以前生まれ、女性:昭和40年度以前生まれ)が該当したうえで、
厚生年金加入期間が1年以上ある方
(本来支給の老齢厚生年金の場合は):厚生年金加入期間が1か月以上ある方
となっています。
老齢年金額の計算方法
老齢基礎年金
老齢基礎年金は定額制(定額×加入月数のイメージ)です。
2023年度より、年齢によって2つに分かれることとなりました。
2023年度の満額の金額は、
795,000円(67歳以下)×保険料納付済月数/480
792,600円(68歳以上)
※20~60歳までの40年間、すべて納付するとこの金額に
保険料納付済月数には、第2号・第3号被保険者の期間(20~60歳までの間)を含みます。
【留意点】
①仮に、22歳から62歳までの480月(40年)厚生年金に加入していても、老齢基礎年金は満額にならない。
60~62歳の分は、老齢厚生年金の「経過的加算」に入る。
②任意加入で、例えば20~22歳までの分を補える可能性はあるが、60~65歳までずっと厚生年金加入だと、二重加入はできないため、その機会はないことになる。
老齢厚生年金
報酬比例部分+②経過的加算+③加給年金(あれば)
【報酬比例部分】
<平成15年3月までの期間分>
平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数(H15.3まで)
<平成15年4月以降の期間分>
平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数(H15.4以降)
報酬比例部分は、厚生年金に相当する部分
イメージとしては、現役時代の給料の平均額×加入月数×一定の係数
平均標準報酬月額(平月):各月の標準報酬月額の総額を、加入期間で割って得た額。
平均標準報酬額(平額):各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、加入期間で割って得た額
以前は、額を下げるため、賞与を厚くする傾向があり、賞与額も含めることに変更されました。
【標準報酬月額とは】
「報酬」とは、基本給のほか役付手当、通勤手当、残業手当などの各種手当を加えたもので、臨時に支払われるものや3カ月を超える期間ごとに受ける賞与等を除いたもののこと。
「報酬月額」を1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分け、その等級に該当する金額を「標準報酬月額」という。
【年金】1等級(8万8千円)から32等級(65万円)までの32等級に分け、その等級に該当する金額
【健康保険】1等級(5万8千円)から50等級(139万円)までの50等級に分け、その等級に該当する金額
例)年金20等級(健保23等級)32万円は、報酬月額31万円以上33万円未満
標準報酬月額は原則として年に一度見直される。(定時決定)
毎年4・5・6月に入ってくる報酬額の平均から算出していく
その他基本給などに変動があり、変動後3ヶ月間の給料の平均月額に該当する標準報酬月額がこれまでと比べて2等級以上変わったときも見直される(随時改定)
【経過的加算(差額加算)】
国民年金に相当する部分であり老齢基礎年金にならなかった部分
「特別支給の老齢厚生年金の定額部分」として計算した額から厚生年金保険の被保険者期間のうち昭和36年4月以降で20歳以上60歳未満の期間の老齢基礎年金相当額を算出し、定額部分から差し引いたもの
定額部分(2023年度の数字)
(S31.4.2以降生)1,657円× 被保険者期間の月数
(S31.4.1以前生)1,652円× 被保険者期間の月数
もし、ある人が国民年金に加入したことが全くなく、加入期間すべて厚生年金加入のみであり、かつその期間がすべて20歳から60歳の間であれば、原則として、経過的加算は0円ということになる。⇒20歳~60歳までの480月分は「老齢基礎年金」から支払われるため
【計算例】
仮に、昭和30年(1955)6月15日生まれ男性
国民年金加入歴なし
厚生年金加入歴:
昭和52年(1977)4月1日~平成27年(2015) 6月14日
平均標準報酬月額が32万円
平均標準賞与額が13万円
※再評価は考慮せず
平成15年(2003)3月まで 312月
平成15年4月以降 146月
平均標準報酬月額:32万円×7.125/1000×312
平均標準報酬額:45万円×5.481/1000×146
711360+360102=1,071,462円(報酬比例部分)
これに(あれば)加給年金が加わり、さらに老齢基礎年金が加わって、65歳以降の年金総額が決まる。
今回は経過的加算(定額部分)を除いて考えたが、定額部分が入るとさらに複雑になります
老齢年金全般
標準報酬月額 2つの用途
【その1】 健康保険料・年金保険料
標準報酬月額に保険料率を掛けたものが保険料になる。
年金は18.3%で固定(労使折半)
健康保険は、健保組合ごと、協会けんぽで異なり、また協会けんぽでも現在は都道府県ごとに若干異なる。
例)協会けんぽ東京 40歳未満は10%(労使折半)
年金+健保保険料の自己負担は概ね15%前後というイメージ
【その2】 年金額の元
在職中の標準報酬月額に再評価率を掛けた数字を平均した数字が年金額の計算に使われる
老齢厚生年金の各制度
繰下げ請求
(老齢年金の)繰下げ請求とは、本来受け取ることのできる年齢(65歳)より後に遅らせた時期に、年金を受け取りたいと請求すること。結果、その時期から本来の額より増えた金額を生涯受け取ることができます。
請求時期を遅らせるとどうなるか
•遅らせている期間中は老齢年金の支払いはありません
•その代わり、1か月遅らせるごとに0.7%増額された年金を一生涯受け取ることができます
1年(66歳)で8.4% 5年(70歳)で42% 10年(75歳)で84%
仮に100万円とすると、
1年→108.4万円
5年→142万円
10年→184万円
たくさんある注意点(一例)
•老齢厚生年金の請求を遅らせている間は、加給年金の支払いもありませんし、後からさかのぼってその期間分を受け取ることもできません
•(同じように)老齢基礎年金の請求を遅らせている間は、振替加算の支払いもありませんし、後からさかのぼってその期間分を受け取ることもできません
•請求を遅らせている期間中も、もし繰下げをせず受け取っていたと仮定した場合、在職老齢年金で、支払いが全部(一部)停止される分は、繰下げによる増額の対象外となります
例)老齢厚生年金15万円のうち8万円が停止相当。残る7万円分しか増額の対象となりません
• 繰下げ請求して増額した分がすべて手元に残るわけではありません
<理由>税・社会保険料の天引きがあり、さらに額が大きいと天引きの率が変わる(上がる)場合があります
よくある質問
Q:65歳前の特別支給の老齢厚生年金を、本来の請求時期(例えば64歳)に請求しないで、後から請求した場合は、その分多くもらえますか?
A:もらえません。理由は、この繰下げによる増額という制度は、65歳からの年金に限られるからです。65歳前の特別支給の老齢厚生年金には「繰下げ」という制度はありませんので、請求を遅らせるメリットはありません
Q:繰下げして増えた金額で年金をもらおうとしましたが、繰り下げるのはやめて今年金を受け取りたくなりました。今68歳ですが65歳からの3年間分をまとめて受け取ることはできますか
A:できます。この場合、65歳からの3年間分を増額なしでまとめて受けとるか、68歳まで3年間繰り下げて増額した年金を68歳から受け取り始めるか、どちらかを選ぶことになります
Q:では、72歳になった時に、繰下げはやめて、65歳からの分をまとめて受け取りたくなった。そういうことはできますか?
A:厳密にはできません。なぜなら年金の受け取りには時効(5年)があるから。現在のルールでは、この場合72歳から繰り下げて増額になった年金を受け取り始めるか、67歳まで2年間繰り下げて請求したとみなして、5年間分を受け取るかのどちらか、ただしこのルールになったのは2023年4月です。昭和27年4月2日より後に生まれた方、または平成29年4月1日以後に受給権が発生した方が対象です。
(他にもいくつか要件や注意点がありますが、詳細は割愛します)
Q:老齢基礎年金と老齢厚生年金のうち、片方だけ繰下げて後からもらうようにすることはできますか
A:できます。よって、例えば加給年金を消滅させず受け取るために、老齢厚生年金はそのまま65歳から請求し、老齢基礎年金のみ繰下げて後から繰下げ請求するということも可能です。
なお、老齢基礎年金を67歳から、老齢厚生年金を69歳から、それぞれ別の時期に繰下げ請求する、といったことも制度上は可能です。
手続きについて
•特別支給の老齢厚生年金の請求が済んでいる方には、65歳になる少し前に、はがき形式の年金請求書が届きます。
それを返送しなければ、老齢基礎年金・老齢厚生年金とも「繰下げ待機」と呼ばれる状態に入りますので、両方繰下げ希望の場合は、はがきを返送しません
•もし片方だけ繰り下げたい場合は、はがき形式の年金請求書の該当欄に○をつけて(繰り下げたい方に)、返送します
•そして、繰下げ請求したい時期に、自分自身で年金機構に対して繰下げ請求をすることになります。
加算されるもの
加給年金・振替加算などがあります。
加給年金
•老齢厚生年金の制度
•家族手当のようなイメージ
•一般的には配偶者加給年金を指すことが多い
•金額は1年あたり約39万円(配偶者加給年金の場合)
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(例外あり)ある人が、65歳になった際(例外あり)、その人に「生計を維持」されている65歳未満の配偶者または原則18歳までの子がいるときに加算されるもの
そのほか、障害厚生年金にも加給年金の制度はあります。 老齢基礎年金にはありません。
【配偶者の条件】
•生計維持
年収850万円未満である必要
•配偶者の厚生年金加入期間
20年未満である必要
⇒20年以上になると、もしすでに加給年金が発生していても、加給年金は停止となる
•事実婚でも可能です
(年金は、基本事実婚OK)
【留意点】
•老齢厚生年金本体が全額停止だと加給年金も停止となる。
一方、老齢厚生年金本体に一部でも支払いがあれば、加給年金は全額支払われる(加給年金に一部停止という概念はない)
•老齢厚生年金を繰下げ請求して増額となった場合でも、加給年金は増額されない
•加給年金対象者である配偶者が年上だと、加給年金が発生することがない(いきなり「振替加算」はありえるが)
•年下の配偶者がいればもれなく払われるわけではない(20年以上の厚生年金加入歴が必要)
振替加算
夫(妻)が受けている老齢厚生年金や障害厚生年金に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金額が打ち切られます。このとき妻(夫)が老齢基礎年金を受けられる場合には、一定の基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされます。
振替加算の対象となる妻(夫)は、通常、その妻(夫)が老齢基礎年金を受給する資格を得たとき(満65歳到達時)において、その夫(妻)が受けている年金の加給年金額の対象となっていた方のうち、次の条件を満たしている方となります。
①大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間生まれ
②妻(夫)が老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間を併せて240月未満である
③妻(夫)の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の(夫は40歳以降の)加入期間が、一定期間(15年~19年)未満である
【金額】
対象者の生年月日による
昭和61年4月1日に59歳以上(大正15年4月2日から昭和2年4月1日生まれ)の方は228,100円
それ以後年齢が若くなるごとに減額していき、昭和61年4月1日に20歳未満(昭和41年4月2日以後生まれ)の方はゼロ円。
例)昭和33年4月2日~昭和34年4月1日生まれ(2023年度中に65歳になる方)33,619円
【手続き】
【原則】
配偶者に加給年金が発生しており、自身が条件を満たす場合は、自身の老齢基礎年金が65歳で発生するとき、自動的につくものである。(年金請求書以外の届書は不要という意味合い)
【例外】
例1:いわゆる「いきなり振替加算」の場合は、自身で手続きを行う必要がある(申請書類あり)
例2:配偶者が65歳以降にはじめて厚生年金20年以上に達した場合
【振替加算が打ち切り・停止になる場合】
①自身の厚生年金加入が20年に達したとき
(退職時改定、70歳到達、離婚時の年金分割等にて)
②自身が障害年金をうけることになったとき
ほか、もともと振替加算が発生しないケースとして、
年収850万円以上の場合 等
調整(減額・停止)されるもの
在職老齢年金、雇用保険給付との調整があります。
在職老齢年金
会社などにお勤めされている方が、老齢厚生年金を受け取る際、その一部または全部の支払いが停止されることです。
【1か月あたりの給料】+【ボーナスの1か月あたり換算額】+1か月あたりの老齢厚生年金の金額)-48万円(2023年度の額) この計算式で出た金額の半分が停止されます。
例)給料月34万円+賞与年間48万円の1/12(=4万円)+老齢厚生年金12万円-48万円=2万円
2万円の半分である「月あたり1万円」が支給停止
※48万円の部分は毎年見直されます(46~48万円の間を動くイメージ)
計算につかう老齢厚生年金の金額は、
①加給年金額
②経過的加算(差額加算)
は除いた額
給料の額は、正確には標準報酬月額
賞与の額は、正確には標準賞与額
であり、完全に額面収入と一致するわけではありません
【よくある質問】
Q:支給「停止」ということは、停止されるだけだから、将来さかのぼってもらえるのではないですか?
A:もらえません。この「停止」は「保留」という意味合いではなく、むしろ「消滅」ととらえていただいた方が適切です。
後日さかのぼって支払われることはありません
Q:自分で仕事をしていて、月収50万円あるのですが、やはりり年金は止まってしまいますか?
A:自分で仕事をしていて厚生年金に加入していない場合は、在職老齢年金の対象になりませんので、年金が止まってしまうことはありません。(例 業務委託契約、請負契約などで働いているフリーランスの方)
ただし、社長は、法人の代表であれば、厚生年金に加入することになりますので、在職老齢年金の対象となります。
在職定時改定
•厚生年金に加入しながら老齢厚生年金を受けている65歳から70歳までの間の方が、基準日(毎年9月1日)に被保険者である場合は、翌月の10月分の年金額から見直されること。
•直近1年間分の厚生年金への加入記録が、すぐに年金額に反映されるイメージ
【以前はどうだったか?】
•厚生年金に加入して働き続けていた場合、
65歳時、70歳時、退職(正確には資格喪失)時
この3つの時点でしか年金額には反映しなかった
•例えば65歳過ぎて働き続けた場合、66歳になっても67歳になっても年金額は基本同じだったということ
⇒年金をもらいながら働いている人にとっては、年金を掛けている実感がわきにくかった(ただちに年金額に反映しなかったため)
【留意点】
•特に手続きは不要。年金額が改定されれば、支給額変更通知書という書類が送られてきます
• この在職定時改定によって、これまで在職老齢年金による支給停止の対象にならなかった方が、支給停止の対象となることはありえます
雇用との調整
【大前提】
65歳前の特別支給の老齢厚生年金は、ハローワークで「求職の申込み」をすると、年金の全額が支給停止となります。
【支給停止期間】 求職の申込みをした月の翌月から、
失業給付の受給期間が経過した月(もしくは)所定給付日数を受け終わった月まで
【受給期間中に基本手当を1回も受けなかった場合】
①失業保険(基本手当)を1日も受けなかった月
②求職の申込はしたが、基本手当はもらわなかった
1か月分ずつ、概ね3か月遅れで年金が支払われる(3か月遅れの1か月払い)
毎月年金額0円の支給額変更通知書とその月の支給額が載った支払通知書が届く
【事後精算】
基本手当を1日でも受けた月は、一旦年金全額支給停止
最終的には、30日=1か月として計算し、もし5か月だったら、5か月分の年金を止めるだけにするため、後から遡って年金が支払われることがある(事後精算)
例)所定給付日数150日 給付制限期間2か月
5/25求職の申込 12/30所定給付日数満了⇒いったん6・7・8・9・10・11・12月と7か月分
年金は止まるが、実際は5か月分停止でよいため、後ろの2か月分(11・12月)を後から年金支給する
高年齢雇用継続給付との調整
大前提
厚生年金加入の形で働き、特別支給の老齢厚生年金を受けている方については、高年齢雇用継続給付を受けると、在職老齢年金とは別に、年金額がさらに一部停止となります。(結果として、在職老齢年金だけでは一部停止だったものの、今回の停止をあわせると、全額停止となることはある)
基本的な仕組み
【高年齢雇用継続給付】
60歳時の賃金からみて現在の賃金が75%未満になったら支払いが始まり、その額は賃金の減少率に合わせてだんだん増えていく
【特別支給の老齢厚生年金】高年齢雇用継続給付を受け取ると調整(一部停止)が始まる(0~6%の間で調整率が漸増していく)
賃金が61%以下になると、支給停止額=標準報酬月額×<最大>6% となり、
例)標月20万円×6%=12000円/月 停止となる
標月36万円→20万円 ▲16万円
雇用継続給付で20万円×15%=3万円補填するものの、その中から、20万円×6%=▲1.2万円年金から差し引く
年金受給者については、3万円→1.8万円へと補填額を60%に圧縮するイメージ
そのほか老齢年金に関する知識
1 合算対象期間(カラ期間)
合算対象期間(カラ期間)とは、
年金額には反映されないが、受給資格期間としてみなすことができる期間のことです。
保険料を納めてもいないし、免除にもなってない期間
ゆえに「カラ期間」という通称があります。
・老齢年金受給のため10年に満たない場合
・遺族年金受給のため25年に満たない場合
などでとても重要な概念
※基本的に、20歳以上60歳未満の期間に限られる
1.昭和61年4月1日以降の期間
①日本人であって海外に居住していた期間のうち国民年金に任意加入しなかった期間
②平成3年3月までの学生(夜間制、通信制を除き、年金法上に規定された各種学校を含む)であって国民年金に任意加入しなかった期間
③第2号被保険者としての被保険者期間のうち20歳未満の期間又は60歳以上の期間
④国民年金に任意加入したが保険料が未納となっている期間
⑤昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方又は永住許可を受けた方の、海外在住期間のうち、取得又は許可前の期間※
2.昭和36年4月1日から昭和61年3月31日までの期間
⑥厚生年金保険、船員保険及び共済組合の加入者の配偶者で国民年金に任意加入しなかった期間
⑦被用者年金制度等から支給される老齢(退職)年金受給権者とその配偶者、老齢(退職)年金の受給資格期間を満たした人とその配偶者、障害年金受給権者とその配偶者、遺族年金受給権者で国民年金に任意加入しなかった期間
⑧学生(夜間制、通信制、各種学校を除く)であって国民年金に任意加入しなかった期間
⑨昭和36年4月以降の国会議員またはその配偶者であった期間(昭和55年4月以降は国民年金に任意加入しなかった期間)
⑩昭和37年12月以降の地方議員またはその配偶者であった期間で、国民年金に任意加入しなかった期間
⑪昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方又は永住許可を受けた方の、外国籍であるために国民年金の加入が除外されていた昭和56年12月までの在日期間
⑫昭和36年5月1日以降に日本国籍を取得した方又は永住許可を受けた方の、海外在住期間のうち、取得又は許可前の期間
⑬日本人であって海外に居住していた期間
⑭厚生年金保険・船員保険の脱退手当金を受けた期間(昭和61年4月から65歳に達する日の前月までの間に保険料納付済期間(免除期間を含む)がある人に限る)
⑮国民年金の任意脱退の承認を受けて、国民年金の被保険者にならなかった期間
⑯厚生年金保険、船員保険の被保険者及び共済組合の組合員期間のうち、20歳未満の期間又は60歳以上の期間
⑰国民年金に任意加入したが保険料が未納となっている期間
3.昭和36年3月31日以前の期間
⑱厚生年金保険・船員保険の被保険者期間(昭和36年4月以降に公的年金加入期間がある場合に限る)
⑲共済組合の組合員期間(昭和36年4月以降に引き続いている場合に限る)
【留意点】
受給資格期間10年(従前は25年)に満たない場合、あるいは遺族年金の長期要件(25年)を満たさない場合は、
必ずこの合算対象期間についてとことん調べた方がよい
現在、年金事務所も力を入れている部分
例)仮に自身の老齢年金が25年未満で発生したとしても、同時に遺族年金のことも考慮し、その段階で合算対象期間についても確認しています
2 併給パターン(老齢と遺族など)
1人1年金の原則
・1人には1種類の年金しか支払われないことを指す。
・原則としては、例えば老齢年金と障害年金は併給できない
・例えば老齢基礎年金と老齢厚生年金は1種類(老齢)の年金であるため、併給とは呼ばない
例外もあります。
例1 【2階部分】老齢厚生年金or遺族厚生年金
【1階部分】障害基礎年金
例2 【2階部分】遺族厚生年金
【1階部分】老齢基礎年金
選択替えのきっかけ
65歳未満:障害基礎年金<特別支給の老齢厚生年金
1人一年金につきどちらかを選択⇒障害基礎年金を停止し、老齢厚生年金を選択
65歳以上:このままだと老齢基礎年金+老齢厚生年金となる
しかし、障害基礎年金を選択し、障害基礎年金+老齢厚生年金というパターンの方が金額的には有利となる場合がほとんど
3 年金制度における男女差
例:特別支給の老齢厚生年金の受給開始年齢の繰下げ
例えば2023年度 受給開始となっているのは、
男性 64歳(昭和34年度生まれ)
女性 62歳(昭和36年度生まれ)
女性の方が受給開始年齢の引上げが5年遅れ
老齢厚生年金の受給開始年齢が男女で異なっていた頃の名残(男性60歳 女性55歳)
4 長期加入者特例
長期加入者特例とは、44年(528月)以上、厚生年金保険に加入している特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受けている者が、定額部分の受給開始年齢到達前に、退職などにより被保険者でなくなった場合、報酬比例部分に加えて定額部分も受け取れます。つまり、まもなくなくなる特例でもあります。
長期加入者特例の留意点
・44年以上は、連続していなくてもOK
・厚生年金は一元化されているが、あくまで、狭義の厚生年金や狭義の共済年金のみで44年を達成する必要(例えば、地共済と私学共済の合算すら不可)
・厚生年金を喪失している状態であること(一旦、長期加入者特例で定額部分が発生しても、再び厚生年金に加入すれば定額部分が止まります)
・受給者からの手続きは特に不要(要件を満たせば自動的に発生)
ただし、加給年金を発生させるための手続きは必要
長期加入者特例のポイント
男性の場合、事実上昭和34年度生まれ、35年度生まれの方でないともはや適用対象とならない。(女性の場合は5年遅れなので、昭和40年度生まれの方まで適用対象となる可能性)
44年(528月)に達するか否かで年金額が大きく変わるので、対象年齢かつ厚生年金加入が44年間あたりの方は、ご自身の年金記録や、厚生年金加入のあり方などをよくご検討ください!
ほか、
仮に退職すると、当然得ることができたはずの収入を失うことになります。
・厚生年金に加入し続けていれば、将来の老齢厚生年金の額はいくらかでも増えたことになる
・配偶者を自身の扶養にしている場合、厚生年金を喪失すると、その配偶者は第3号でいられなくなり、第1号被保険者となる
・退職しても失業保険をもらうと、特別支給の老齢厚生年金は全額停止となり、特典を受けられないことになる
といったことにもご留意ください。
5 厚生年金基金の代行返上
まず厚生年金基金とは
厚生年金基金制度は、国が行う老齢厚生年金の一部(報酬比例部分)の支給を代行し、これにプラスアルファ部分を上乗せして年金給付を行う仕組み。退職金制度と厚生年金制度との調整をはかるものとして導入された企業年金の一種類です。
基金加入社の場合、厚生年金保険料の一部の国への納付が免除される。それを原資として、基金が代行して厚生年金を支払うこととなり、その部分については、国からは支払われません。
厚生年金基金解散の背景
高度成長期に導入された制度であるため、高度成長期が終わると、それまでの運用成績を維持することが難しくなってきた。ゆえに、独自給付の財源どころか代行部分の財源を確保することすら難しい「代行割れ」状態に陥る基金が出現するようになりました。
さらに、平成25年の法律改正により、代行部分の資産の保全の観点から存続のための基準が厳しく設定され、平成26年4月以降、厚生年金基金を解散するかまたは確定給付企業年金へ移行することが促されることとなりました。
厚生年金基金解散にともなう影響
①上乗せ分であった独自給付がなくなる場合が多い。
(総支給額が減ることになる)
②代行返上に伴い、基金からの支給がなくなり、すべて国からの支給となる(国からの支払いは見かけ上増加する)
代行返上
平成26年4月1日以降に解散した基金の場合、代行部分に係る最低責任準備金は国に納付されることとなり、その結果として、今まで基金から支払われていた部分は、国から支払われるようになりました。これがいわゆる「代行返上」です。
結果として、年金機構が担当する部分の支給額は増加することになるが、一方、その分基金からの支払いはなくなり、上乗せ額の支給がなくなる場合もあり、総支給額が減少する場合が多いです。
なお、支給額が増加する際には、代行返上が理由による増額であるとする支給額変更通知書が発行されます。
留意点
国に代行返上された分は、年金機構担当の老齢厚生年金に含まれるからよいが、基金独自の給付分は、手続をしないと受け取れない場合が多いため、
「企業年金連合会」へ一度お問い合わせを!
※また、平成26年3月31日までに厚生年金基金を短期間で脱退した、いわゆる「中途脱退者」に対する年金給付、および同日までに解散した厚生年金基金加入員に対する年金給付は、企業年金連合会からされます。
6 老齢年金にまつわる疑問に回答いたします
年金生活者支援給付金
物価上昇への対応策として、老齢・障害・遺族基礎年金(国民年金)受給者に対して、上乗せ給付的な給付金が支払われています。
消費税率引き上げ分を活用し、公的年金等の収入金額やその他の所得が一定基準額以下の方に、生活の支援を図ることを目的として、年金に上乗せして支給するものです。
【対象】
老齢基礎年金
障害基礎年金
遺族基礎年金
これらの受給者の一部が対象
【例:老齢基礎年金受給者の場合】
【支給要件】以下3点すべてを満たす必要
(1)65歳以上の老齢基礎年金の受給者
(2)同一世帯の全員が市町村民税非課税
(3)前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が881,200円以下
【給付額】
月額5,140円を基準に、保険料納付済期間等に応じて算出される以下①②の合計額
①保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5,140円 × 保険料納付済期間/ 被保険者月数480月
②保険料免除期間に基づく額(月額) = 11,041円
× 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
【留意点】
①物価スライドの対象のため、毎年額の変動がありうる
②支給要件を満たす場合、2年目以降のお手続きは原則不要
③年金が全額支給停止のときは支給されない
④振込は通常の年金と同じく偶数月の15日
⑤通常の年金とは別に振り込まれる
⑥通常、対象になった人には自動的に請求書が送られてくるが、
請求書送付のタイミング以外のときに収入が下がるなどした場合は自分自身で請求する
代行内容と料金
全て諸経費(送料等実費)は除きます | 金額(税込) | |
1 | 老齢年金の見込み額試算 | 15,000円 |
2 | 老齢年金の請求手続き代行 | 30,000円~ |
3 | 年金記録の調査 | 30,000円~ |
※上記料金は標準的なケースに限り、例外的なケースの場合は別途料金をいただく場合がございます。あらかじめご了承ください。